「こうした基礎力が身に付くよう、家庭学習や日々の生活できちんと面倒がみられるならば、低学年のうちから塾に行かせる必要はありません」

  ただ、現実的には共働きが増え、そこまで手がまわらない家庭も多いだろう。もし基礎固めに不安が残るのであれば、先取り学習に捉われない塾に通わせるのも一手だという。

 吉田氏のもとには、既に1年生の時点で「大手塾に通っているが、全く成績が伸びない」「塾に行けば自分で勉強するようになると思っていたのに」などの悩みを抱える保護者から相談が寄せられる。2月に開校する「進学館ルータス」はその受け皿にしていくつもりだという。

 一般的に、塾は5~6年生の指導に熱を入れ、時間的に余裕のある低学年の指導のウエートは低くなる。吉田氏はそこを逆手に取り、低学年から手厚くじっくりと育成する考えだ。まだ基礎に不安があっても、低学年のうちは反復学習で取り返せることも多い。たとえば、計算のケアレスミスをなくすには毎朝10分でよいから必ず問題に取り組むなど、個々の子どもに合わせたプランを提供する。学習が始まって間もない低学年こそ、本人にとっても家庭にとっても、具体的な指導が必要だからだ。

 もっとも、塾にさえ行かせれば、学力がつくわけではない。最適な学習環境で勉強をする、という体験を積み重ねて、だんだんと学力は身につくものだ。家庭でどこまでできるかを見極め、できないことが多ければ低学年からの入塾を検討すればよい。答えは、各家庭にある。

(AERA dot.編集部/市川綾子)

※次回は「受験校を見直す3回のタイミング」について紹介します。