ベネッセグループ初の中学受験塾「進学館ルータス」を率いる吉田努氏に「中学受験の本質」を聞く連載の第4弾。首都圏の中学受験が過熱する中で、小学1~2年生の低学年のうちから入塾させる家庭も増えている。その背景には、まわりに後れをとってはならない、人気の大手塾に入れなくなる、と不安にかられる保護者の心理がある。早期入塾には批判もつきまとうが、吉田氏はあえて「小2の2月」を基準として挙げる。その真意とは――。
※記事<<「ベネッセ中学受験塾」統括が「高学年の転塾はやめるべき」と指摘する意外な理由>>より続く
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わが子の受験戦争を勝ち抜くには、少しでも早くスタートを切ったほうがよいのではないか。保護者の漠然とした不安は、先回り思考を加速させる。
一般的に塾の新年度は2月から始まるため、秋以降は入塾への関心が高まる。首都圏の人気大手塾では、新1年生クラスでさえも、新年度開講前に既に何十人も入塾待ちという状況で、いわゆる「席の確保」を兼ねた争奪戦が行われている。一方で、早い学齢から受験勉強に向かわせると、途中で息切れして“脱落”しやすいという説もある。吉田氏のもとにも「わが子はいつ塾通いを始めればよいのか」という相談は多く寄せられるという。
「いつから塾に行かせるかではなく、家庭でどこまでできるかを第一に考えるべきです。その上で、難関校を狙うのであれば、新3年生(2年生の2月)での入塾が一つの基準になるでしょう」(吉田氏)
というのは、この時期から、大手塾では“受験算数”と言われる和差算や植木算といった特殊な計算を扱い始める。市販の問題集を使って保護者が勉強を教えられるならば、家庭学習でよしとする。しかし、保護者が中学受験を経験しておらず勝手がわからない場合や、子どもに教えることが苦手な場合は、プロに任せたほうがよいことが多いという。
中学受験の“王道”は新4年生(3年生の2月)からの入塾で、中学受験人口の5割ほどはこの時期からのスタートになる。ただ、新4年生は理科、社会の授業が本格的に始まり、学習量がぐっと増える時期でもある。だからこそ、国語や算数の基礎が固まっているかどうかで差が開いてくるという。