受験年となる6年生は、新しい知識を入れるより、ひたすらアウトプットの時間になる。これまで学んだことをどう生かすか、過去問と向き合って弱点を見つけながら、本番に備えていくことになる。つまり6年生で手遅れとならないよう、5年生までに、保護者は子どもの様子をよく見ながら、過去問に取り組むべき志望校を見極める必要があるのだ。
とはいえ、多くの保護者が志望校選びに頭を悩ませることも事実。吉田氏は次のようにアドバイスする。
「志望校の決め方は、シンプルでいいんです。その中高一貫校に通わせることで子どもに何を得てほしいのか。入試の“少し先”を視野に入れて考えると整理されてきます。まず、選択肢は2つ。大学受験を考えずに深い人脈が築ける大学附属校を狙うのか、ゴールを大学受験に見据えて高い学力をつけるための進学校がいいのか。それを決めた上で、男女別学か共学か、宗教色はあってもいいかなどを判断する。それらの整理ができてから、子どもの学力をプロと相談して見極めながら、最終的に決めていくといいでしょう」
わが子をより良い学校に行かせたいという保護者の思いは、吉田氏は痛いほどわかるという。6年生になっても成績は低空飛行のままで一向に志望校が射程圏内に入ってこない、まるで課金地獄さながら併塾にかかる費用だけが増えていく……悲壮感でいっぱいの保護者に出会うことも多い。
だからこそ、吉田氏は強調する。最初の塾選びが何より大事であり、いったん受験のレールに乗ったのならば、保護者が打ちひしがれている場合ではない。戦っているのは子どもなのだ。保護者が悩みを抱え込んでいても意味はなく、第三者であるプロの意見を聞くことで突破口が見つかるかもしれない。とにかく保護者はやれることを尽くし、わが子には「さすが!」「信じられない!」「すごいぞ!」「せっかくやってきたんだからもう少し!」「その通り!」という“さしすせそ”の言葉をかけて励まし続けるべきだ、と。
「チャレンジして良かったと思える受験にするのか、思い出したくもない受験で終わらせるのか。親子の関係次第で、その後の人生にも大きく関係してきます」(同)
中学受験の闘いは長い。わが子が今どんな時期で、今どう頑張っているのか。これを知っているだけで、親子の接し方は変わるはずだ。
(AERA dot.編集部/市川綾子)