大阪桐蔭出身の中日・根尾昂
大阪桐蔭出身の中日・根尾昂
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 明治神宮大会で高校の部としては初の連覇を達成した大阪桐蔭。3度目となる甲子園春夏連覇は逃したものの、今年1年の公式戦は42勝(センバツ高校野球の広島商戦の不戦勝含む)2敗と、圧倒的な成績を残している。秋からの新チームも絶対的なエースである前田悠伍だけでなく、能力の高い選手は多く、来年も高校野球界の中心となる可能性は極めて高いだろう。

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 しかし今年のドラフト会議後には、そんな大阪桐蔭についてある噂がまことしやかに聞かれるようになった。それは大阪桐蔭出身の選手はプロで大成しないからプロ側が指名を避けたというものだ。実際、捕手の松尾汐恩はDeNAから1位指名を受けたものの、上位指名が有力と見られていた立教大の山田健太や高校日本代表にも選ばれていた川原嗣貴、海老根優大などが揃って指名されなかったのだ。現役の部員と卒業後大学、社会人に進んだ選手を含めて合計10人がプロからの調査書を受け取っていたものの、結局指名を受けたのは松尾だけだったという。

 この噂の背景にあるのは2018年に2度目の甲子園春夏連覇を達成したメンバーのプロでの苦戦がある。藤原恭大(ロッテ)は3年目の昨年47安打、5本塁打を放ったものの、今年は成績を落としてレギュラー獲得にはいたっていない。同じくドラフト1位でプロ入りした根尾昂(中日)も野手として結果を残せず、今年投手に転向となっている。さらに投手の柿木蓮(日本ハム)と横川凱(巨人)の2人はこのオフ自由契約となり、育成選手として再契約となっているのだ。入団時の期待値から考えると、物足りない4年間だったことは確かだろう。

 しかしだからと言って大阪桐蔭出身の選手がプロで大成しないと決めつけるのは早計ではないだろうか。まず一つ言えることは、特定の高校からそこまで多くプロの一流選手を輩出し続けているという例はないということである。昨年行われた東京五輪のメンバー24人を見ても、駒大苫小牧(田中将大、伊藤大海)と大分商(森下暢仁、源田壮亮)の出身選手が2人いるが、他の選手の出身校はバラバラである。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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大阪桐蔭出身は活躍しないは間違い?