若い世代、男性、高級車、きっかけは相手の運転行動……限定的な調査ではあるが、なぜ、こうした傾向が出るのか。
日本アンガーマネジメント協会の戸田久実理事は、「性別や年代、車種に関係なく安全運転を心がけているドライバーはたくさんいます」と前置きした上で、加害側に高級車、被害車両に安価な車が多い理由については、「車の価値イコール自分の価値、そう思い込んでしまう人は少なからず見受けられます」と指摘する。
「そうした方は安価な車に乗っている人より自分の方が上だ、と優位性を誇示しマウントを取ろうとしがちです。職場でのパワハラも同様ですが、相手は立場が弱く、マウントを取りやすい人を選びます。安価な車の被害が多く、被害者には女性が含まれるのもその表れではないかと思います」(戸田さん)
高級車に乗って優越感を感じているその時に安価な車に追い抜かれ、さらに割り込んだりすれば、「そんな車に乗ったお前ごときが」と憤り、あおり運転につながるということか。
だが、話はそう単純でもなく、あおり運転に至るには複合的な要因が考えられるという。
戸田さんは、そもそもなぜ人間が怒ってしまうのかの前提として、
「怒りとは『防衛感情』の表れ。自分の身を守るための感情だということを、まずは知っていただきたいと思います」と話す。
あおり運転につながった怒りのきっかけとして、「進行の妨害」や「割り込み」が目立つが、これもその防衛感情が働いてのものだという。
「例えば違う車線の車がウィンカーをつけずに前方に割り込んできたら、危ないと誰もが思いますよね。こうした、自分の身の安全を脅かしたことに対しての防衛感情として、怒りが湧く仕組みなのです」(戸田さん)
前の車が周囲の車より明らかに低速で走っていたり、追い越し車線上をゆっくり走っている車を「邪魔だ!」と思ったこともある人もいるかもしれないが、これも「目的地に早く行きたいという自分の行動を邪魔されている」という防衛感情の表れ。自分の心や身体の安心・安全が脅かされそうになる、また権利や大切にしているものを侵害された場合に、怒りをもって対応するという本能があるという。