2011年の東日本大震災では多くのペットが現場に取り残され、飼い主の元に戻れなかった。以後対策が進んだが、災害時は不測の事態も起こる。16年の熊本地震や18年の西日本豪雨ではペット可と発表された避難所でも、受け入れ不可になったケースもあった。AERA臨時増刊「NyAERA2020」から。
【写真】熊本地震で、ペット対応の避難所に愛猫と同行避難した女性
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三毛猫の名前はペコちゃん(メス)。広島市在住の夫妻の愛猫だ。2018年、西日本豪雨で被災し自宅が損壊したため、飼い主夫妻は避難所で生活することになった。ペコちゃんは避難所には入れなかったため、夫妻は毎朝、ペコちゃんが「留守番」する自宅に通って世話をした。
人も手一杯となる災害時、ペットの命をどう守ればいいか。
東日本大震災では多くのペットが現場に取り残され、飼い主の元へ戻れなかった。その教訓を生かし、13年、環境省は災害対策ガイドラインを発表(18年に改訂)。「ペットは連れて逃げる」同行避難を推奨した。
さまざまな自治体が、ペットの命を救うための仕組みを構築しようとしている。東京都世田谷区では、16年、「被災動物ボランティア」制度を導入した。避難所での動物をめぐるトラブルを軽減し、よりスムーズな避難を実現するため、ボランティアの力を借りることにした。ボランティアは次の3種類。
◎災害時活動ボランティア……避難所などで活動。被災動物の世話の支援、動物スペースの管理、維持運営を行う。20年1月現在、約100人が登録。
◎情報管理ボランティア……情報の収集・拡散を担当。区のホームページに掲載するための情報(各避難所の受け入れ状況など)を区側に伝え、区が広報する情報をSNSなどを使って拡散する。現在、約50人が登録。
◎施設提供ボランティア……被災動物の一時預かり場所の提供(世田谷区内または区との境界付近に限る)。現在、約20人が登録。
登録したのはほとんどがペット飼育の経験者で、ボランティアは年1回、研修を受ける。世田谷保健所生活保健課長の加藤政信さんはこう話す。
「19年度の研修は昨年12月14日(土)に実施しました。ボランティア以外にも、世田谷、北沢、玉川、砧、烏山の5地域や区民に身近な28地区の『まちづくりセンター』の防災担当からも参加がありました」