ゆくゆくは、すべての「まちづくりセンター」にペット同行避難について理解者がいる体制を作りたい考えだ。同区危機管理室災害対策課長で、自身も愛犬家という前島正輝さんは言う。
「避難所開設には施設の確保や備蓄の管理、運営まで広範なタスクがあります。これまでペットに特化した対策にまで手が回っていなかった」
現在は避難所運営者に活用してもらう「避難所運営マニュアル(標準版)」を改訂、ペット同行避難への対応を具体的に盛り込んだ。
だが、こうした対策がすぐに奏功するかというと、なかなか難しい。
昨年の台風19号に際しては、10月12日朝、区内8カ所に自主避難所を開設したが、あっという間にいっぱいになり、ペット連れとそうでない人を分ける余裕もなくなった。やがて避難勧告が出て避難所は27カ所まで拡大されたが、ペット受け入れを断ったケースもあったという。
「あと1~2時間降り続いたら多摩川が氾濫した可能性もあった。もしそうなれば、避難期間も延びることになる。より大きな災害が来る前に、関係各所の連携を進めたい」(前島さん)
「台風が過ぎた後も、被災した家の補修中に犬をどこへやろうか困っている人がいる、という情報が入り、施設提供ボランティアに連絡を取って、受け入れ態勢を整えました。つまり、災害後のことまで視野に入れる必要がある。結果的にボランティアに預けた人はいませんでしたが、今回、仕組みが機能することはわかりました。あとは区民への周知と理解が課題です」(加藤さん)
さまざまなケースを想定し、地道に準備を進めていく方針だ。(ライター・浅野裕見子)