撮影:重信正嗣
撮影:重信正嗣

 写真家・林典子さんは12年にキルギスの誘拐結婚を取材し、翌年、写真展を開いた。

「林さんの講演を聞きに行ったことが大きかったですね。それで、キルギスがどんな国なのか、実際に見てみたいと思いました。でなければ、カザフスタンか、ウズベキスタンに行ったかもしれません」

 キルギスの面積は日本の半分ほど。人口は670万人(22年)。国土の9割が標高1500メートル以上の高地で「中央アジアのスイス」と呼ばれる。琵琶湖の約9倍の広さのイシク・クル湖があり、周囲には雄大な山々が広がる。

「実際に行ってみて感じたことは、確かに日本人に近い顔立ちの人がたくさんいるのですが、ロシア系の人が想像以上にいました。中国に近い東部にもロシア正教会がある。現地のロシア系住民以外にもロシアからも観光客が来ていて、ロシア人にとっての避暑地みたいでした」

 キルギスにはウクライナ系の人も暮らしている。それを感じたのが首都ビシュケクの公園で撮影した写真に写る男性だという。

「この人はイタリアのサッカークラブ、ACミランのジャージーを着ています。ウクライナのアンドリー・シェフチェンコ選手がACミランにいましたから。ウクライナとキルギスは同じ旧ソ連の国という認識があるんだな、と感じました」

撮影:重信正嗣
撮影:重信正嗣

■ムスリムでも飲酒は自由

 キルギスはほかにもウズベク系、ドゥンガン系、ウイグル系、タジク系の人々が住んでいる多民族国家である。

「いろいろな人が暮していて、多様な人々の持つ色がキルギスの風景や風土と一体になった感じがすごく印象的でした」

 人々の服装は鮮やかで、赤、ピンク、紫、青などの原色が鮮明に焼きついた。

「さらに、どこに行っても絶景に次ぐ絶景で。豊かな自然が織りなす色が徐々に夜明けとともに変わっていく。朝、食事をとる前に宿のまわりを歩いて、現地の人とコミュニケーションをとりながら写真を撮影しました」

 町を歩いて不思議に思ったのはキルギスの宗教だ。

「イスラム教の国なんですけれど、ビールはばんばん出てくるし、ウオツカも作っている」

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