結婚して親離れし、はじめてひとりの人として認められたと感じていたマイさんだが、数年前にメンタルの調子を崩し、精神科にかかる。そこで親からの抑圧による影響を指摘され、現在はカウンセリングを受けながら子ども時代のことを振り返り、整理をしている。

 作中の真実は、自分の意志で実家を出て上京した。架との結婚も決まった。ある意味、理想的な形で親離れできるかに見えた。そんな矢先の失踪だけに、架も真実の両親も「なぜ?」という疑問がことさら強く出てきたのではないか。

 さて、「いい人いないの?」を機に、親への反発心がむくむくとわいてきたユウナさんの話に戻る。ユウナさんは成人した後、意外な行動に出る。

就職してから、美容整形をはじめました。最初は歯の矯正からスタートして、お給料を貯めては手術を受けました。高校時代までは容姿に一切構わなかった私ですが、大学生になり、そして社会人になってルックスがいい女性のほうがていねいに扱ってもらえるということにやっと気づいたんですね。普通は10代で気づくものなんでしょうけど」

 歯の矯正とはいうが、何本も抜歯するという大掛かりなものだった。ダウンタイムが6カ月かかる顎の手術を前に、会社を辞めた。

「親は、『なんで整形なんかするの?』『お金がもったいない』とはいいましたが、私のなかでは親が反対することをなんとしてでも成し遂げないと、自分の人生は生きられないという気持ちが強かったんです」

 希望していた手術をひと通り終え、ユウナさんはいまの自分の顔に満足している。「のび太くん」の面影はもうどこにもない。そうすることで得たものはあるのだろうか。

「いい子って、ずっとマウントされている状態だと思うんです。親からはもちろんだし、どこにいてもマウントされる側に自分を置いてしまう。人が作ったルールに合わせて生きていくんです。それを楽だと感じていたときもあるけど、次第に世界が怖く感じられるようになりました。自分自身を生きていないから。それが、整形をして変わったんです」

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「ルールに合わせる側じゃなく、ルールを与える側になれた」