公立王国と言われる愛知でも、徐々に中学受験をする家庭が増えている。日能研東海の野田幹人代表は、東海地方の私立中高の状況を次のように話す。
「首都圏のように競争が激しくないため、のんびりしている。そのなかで、情報をいち早くキャッチし、改革に取り組んでいる学校が伸びています」
早くから改革に着手し、実績を伸ばしてきたのが名古屋だ。早慶上理での伸びは6.9、GMARCHも8.1とトップ。16年度からグローバル入試を導入した。森田祐二校長は言う。
「東海にはトヨタ自動車などグローバル企業があるのに、帰国子女を積極的に受け入れる私立がなかった。入学した生徒は非常に優秀で、周囲に刺激を与えています」
帰国子女だけでなく、芸術分野などで全国レベルの実績を上げた生徒なども対象にしている。さまざまな経験を積んだ生徒が身近にいることで、一般入試で入った生徒にも良い影響を与えているという。
国立難関3.3、早慶上理5.3の海陽中等教育学校(海陽中教)は、全寮制の男子校。全国から生徒を集めている。
「東大合格者も順調に出ている。寮での生活も含め、人を育てる教育が大学実績にも表れているのでは」(野田代表)
国立難関6.5、早慶上理4.1と実績を伸ばしている名古屋大学附属は、将棋の藤井聡太七段が在籍していることで話題になった。大学付属の利点を生かし、教養教育に力を入れている。国立難関5.5の鶯谷は、岐阜トップの伝統校。カリキュラムの改変やきめ細かな指導で受験生に支持されている。GMARCH3.9の金城学院は注目の女子校。15年に高校、17年に中学校舎を建て替え、ラーニングコモンズを併設した図書館を中・高それぞれに設置した。
前出の名古屋は、17年から図書館を365日オープンに。年末年始には1日100人以上の生徒が訪れる。
「仲間の勉強する姿が励みになる。いわゆるオタクも、スポーツや勉強に秀でている生徒と同様、一目置かれるのが男子校の良さ。本校の生徒も、それぞれの居場所を見つけて、伸び伸びと過ごしています」(森田校長)
長期休暇には、多くの進学講座が開かれる。13年から生徒の知的好奇心を高めるために教養型の講座も導入。昨年は英語による化学実験やギター演奏の指導、死刑制度の是非などをテーマにしたディベートなどが開かれた。19年は東大3人、京大4人をはじめ、国公立大に171人が合格した。北海道や東北、九州など、全国の国立大を視野に入れている。
海外研修も活発だ。イギリスの名門イートン、オーストラリア、アメリカなどの提携校で研修やターム留学を実施。部活もグローバルだ。強豪のサッカー部はドイツ、バスケットボール部は米ボストン、ラグビー部は台湾へ遠征している。
キリスト教系の学校として、週に1時間の礼拝と聖書の授業も大切にしているという。
「信仰を強制するわけではありません。これからの時代、哲学や教養として宗教を学んでおくと、グローバル世界で活躍する武器になります」(同)
(ライター・柿崎明子)
※AERA 2019年6月10日号より抜粋