沖縄が「辺野古ノー」の民意実現に向け政府に設置を求める協議機関「SACWO」。その先行事例が海外に存在する。舞台は北欧・デンマークだ。
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デンマークの自治領グリーンランドには米軍基地がある。2004年、基地運用をめぐりグリーンランド、デンマーク、米国の間で「イガリク協定」が結ばれた。
「東京、ワシントン、那覇の三者間合意が、国際協定として締結されているイメージです」
北欧政治に詳しい北海道大学の高橋美野梨助教(36)はそう解説する。協定に基づき設置されている三者の合同委員会は、沖縄県の玉城デニー知事が日本政府に設置を求めている日、米、沖縄による協議機関「SACWO」の先進モデルとも言える。
「重要なのは、地方政治主体(自治領、地方自治体など)が国際交渉のプロセスにおいて、国家間と同じテーブルで対等な立場で発言できる制度が確立されていることです」(高橋助教)
世界でも稀有な制度実現の背景には何があったのか。
グリーンランドへの米軍駐留開始は1941年。米国とデンマークの間で防衛協定が締結された。当時、グリーンランドはデンマークの植民地だったが、79年に自治政府が発足した。
イガリク協定のベースは、03年にデンマークとグリーンランド自治政府の間で交わされた「イチリク宣言」だ。グリーンランドにとって重要な外交・安全保障に関して「グリーンランド当局が国際交渉を要求し、それに平等にかかわり、影響を与えることができる」「国際法上の協定に対して共同調印者になることができる」などと規定している。ただ、安全保障政策の最終的な決定権はデンマーク国会が保持している。
グリーンランドに現在残るのはチューレ米空軍基地のみ。デンマークではそもそも、米軍基地の設置が可能な区域は、グリーンランドに限定されている。
「米軍基地をデンマーク本国に展開させるオプションがないため、安全保障政策上、デンマークはグリーンランドに依存している状態。デンマークが米国との関係を良好に維持するには、グリーンランドの意向を尊重せざるを得ない立場にあるのです」(高橋助教)