侍ジャパンの3大会ぶり3度目の優勝で幕を閉じた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。MVPに輝いた大谷翔平(エンゼルス)が世界一を決めたマウンドで喜びを爆発させる姿は日本野球史の中でも最も印象的なシーンの一つとなったのは間違いないだろう。
【写真】美しい筋肉、私服ファッション、着物姿まで…大谷翔平お宝写真ギャラリー
そして、その大谷が最後の打者として三振を奪った相手がチームメイトのマイク・トラウトだった。トラウトはここ10年近く“最強打者”としてMLBに君臨し、今回の米国代表では主将を務めるなど正真正銘のスーパースターだ。トラウトが最後の打者となったことで、優勝の場面はよりドラマチックなものとなった。
試合後に大谷との対決を振り返り「自分が望むような結果にはならなかった」と世界一を逃した悔しさを示した一方で「とても楽しい対戦だったね」とコメントするなど、トラウトが野球を“フェア”に楽しむ姿勢は大会を通して目立った。
侍ジャパンと戦った決勝でもそれを如実に感じ取れるシーンがあった。
米国代表が2点ビハインドの7回表、無死一、二塁の場面で打席に立つと、この回から日本代表のマウンドに上がった大勢(巨人)の初球がインコースを厳しくえぐった。ボールは手首に当たったかのようにも見えたが、何食わぬ顔でトラウトは次の投球を待ったのだ。
実際にスローで見るとボールはグリップエンドに当たっており、死球ではなかった。だが、野球ではこのような1点を争うような場面で体をかすめるような投球があった際には、死球を自らアピールすることは度々あることだ。特に負けたら終わりのトーナメントでは多く見られるシーンで、甲子園でも球児が死球を必死にアピールしたものの、当たってないと判定され打席に戻るシーンがあるが、トラウトに限っては死球を球審に求めることすらしなかった。
「ただ勝てばいい」というのはトラウトの“美学”に反するのだろう。とにかく野球を楽しみたいというのがトラウトの哲学であるのは間違いなく、その姿勢は若手時代から変わっていない。