■なぜ猫より犬がいいのか? 最大の要因は運動習慣

 谷口氏によると、犬を飼育した場合とを飼育した場合に差が見られるのには、いくつか理由が考えられる。

「最大の理由は、犬を飼っている人は散歩を含めた運動習慣があること。例えばスポーツは天候やその日の気分などに左右されますが、犬は毎日最低1回、散歩に連れていく必要があります。運動習慣があることはフレイルの予防に効果的です」

 谷口氏の過去の調査では、犬の飼育経験がある人はフレイルの発生リスクが低いことが明らかになっている。フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の虚弱な状態を指す。

「フレイルは、要介護や死亡だけでなく、認知症を引き起こす要因になることも知られています。健康長寿の実現には、病気の予防に加えて、フレイルの予防や進行の抑制が重要です。近年の研究成果から、運動や栄養管理、社会参加活動が十分な高齢者ほど、フレイルを発症するリスクが低いことがわかっています」

 厚生労働省は運動習慣を「週2回以上、1回30分以上、1年以上継続して実施すること」と定義しており、犬を飼っているとこの条件をクリアしやすいのだ。ほかに、犬の散歩中に近所の人と立ち話をする機会が増えることで社会的に孤立しにくくなり、フレイル予防に効果的と考えられる。

 しかし、と谷口氏は続ける。

「犬を飼ったことでアクティブになったのか、もともとアクティブだから犬を飼っているのか。両者の因果関係はまだ明らかになっていません。また、人によっては猫やほかのペットを飼うことで社交的になる場合もあるでしょう。この辺りの研究も今後進めていきたいと思います」

■ペットを飼うことで介護費用が半額に抑えられる

 いずれにせよ、ペットは一部の人が可愛がる対象である「愛玩動物」という捉え方から、「健康増進効果をもたらすパートナーである」と認知される時代へと移行していることは事実なようだ。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
ペット飼育者の介護保険サービス利用費は非飼育者のほぼ半額