東京都健康長寿医療センター研究所では、ペット飼育と社会保障費との関係を調べるため、2017年に埼玉県鳩山町の65歳以上でペットを飼っている96人と飼っていない364人を対象に、直近1年半の医療や介護の利用状況などを比較。ペット飼育者と非飼育者との間で医療費に差はなかったが、ペット飼育者の介護保険サービス利用費は非飼育者のほぼ半額だった。
近年の日本では、ペットに対する考え方が見直されつつあるが、アメリカやドイツ、オーストラリアなどの“ペット先進国”と比べるとまだ発展途上にある。今後、人と動物が共生できる寛容な社会の構築を目指すことは、社会保障費の抑制をはじめとする様々な社会課題の解決にもつながるはずだ。谷口氏は言う。
「ペットの飼育は個人と社会の両方にメリットがあることが明らかになってきました。それぞれ事情があるのでやみくもにペットを飼うことを勧めるわけではありませんが、我々の研究がペットを飼いたい人の背中を押すことになればうれしいです」
(文・酒井理恵)