近くて遠い隣人、韓国との関係が昨年来、またもや緊張の度合いを増している。そんな中、注目すべきは、親世代と子世代とでは韓国に対する印象が異なることだ。
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一家団欒の楽しいお正月になるはずだった。父(62)のその発言が飛び出す前までは──。それは数年ぶりに家族が食卓に集まり、テレビを見ながら食事をしている最中だった。
「韓国人はいつまで日本に謝れと言うんだ。バカだな本当に」
韓国大法院が元徴用工に対する日本企業の責任を認める判決を下したニュースが流れていた。普段から政治に対する意見を口にしたことがない父。大学生の女性(22)は驚いた。
「そのニュースが歴史認識や戦後補償など両国にとって微妙な問題だということは理解していました。ただ、気になったのはテレビを見つめる父の顔が、見たこともないような怪訝そうな表情だったのです」
ただ、一瞬の出来事だったので「えっ」とは思ったが、その時はスルーした。
■あいつらは日本が嫌い
決定打となったのは同じ日、バラエティー番組を見ていたときだった。今度はあるタレントを指して「あいつは在日だな」と言ったのだ。
そのタレントは安倍政権を批判する発言を繰り返していた。父の物言いには明らかに、相手をさげすむニュアンスが含まれていた。数時間前の父の発言も相まって、今度はスルーすることができなかった。
「在日だったらどうなの?」
気がついたらそう父に尋ねていた。父は戸惑った様子だった。まさか家族が反応するとは思わなかったのだろう。確かに父のつぶやきは同意を求めるものではなかったし、聞き流せば独り言で終わっていた。食卓に流れる沈黙。たまりかねて再度同じ質問を投げかけると、父の本音ともとれる発言が飛び出した。
「あいつらは日本が嫌いなんだ。何をされるかわからない。けど、しょうがない。日本と韓国はそういう運命だから」
全く質問の答えになっていなかった。父は韓国人と在日コリアンの違いすら正確に把握できていないようだった。父は消防士。責任感が強く、ご近所からも慕われる町内の顔役だ。おせっかいで、困った人がいると放っておけない。自然が大好きで、幼い頃は弟と海や山へ連れて行ってもらった。優しくて地域の人のために尽くす、自慢の父だった。