「60年代、70年代の韓国は経済的にも文化的にも成熟しておらず、敗戦の焼け野原から高度経済成長を達成した日本を、常にアジアの先進国として仰ぎ見る存在でした。その韓国が国力の差は現在も歴然とあるものの、例えば三星(サムスン)に代表されるケータイや家電、Kポップなど芸能などの分野で日本と肩を並べ、追い越す存在となったことが面白くないのです。韓国政府が国際社会において日本と対等な立場で発言するようになればなおさらです」
つまり、日本人の50代以上の世代が韓国に対して感じる「わだかまり」の正体は、かつて民主化も達成されず、発展途上国だった弟分の韓国が、政治、経済、文化などあらゆる面で兄貴分の日本を頼りにしていた心地のいい時代を懐かしむ「郷愁」だというのだ。
■関係変える解決策とは
日韓が手を携えて準備し、成功させた日韓共催のサッカーW杯から約20年。前出の金教授は、ふたをあけてみると、実は日韓はパートナーではなく、ライバルだったと気付かされた20年だったと振り返る。
「中国とも同じく歴史問題を抱えているが、経済面で中国と日本のつながりはいまだに深い。一方、韓国とは政治、経済、あらゆる意味で競合関係でしかない。かつて日本企業から技術提供を受けたサムスンや現代などの財閥企業は、国際市場で日本のシェアをあっさりと追い抜いてしまった。こうした現実を踏まえた上で、韓国との関係を立て直す策が両国ともに見つけられないのが本当の課題なんです」
お互いの国家の正当性だけを主張しあっても、関係の立て直しは展望できない。両国のリーダーが、日韓関係をポジティブに変える解決策を見いだす日は来るのだろうか。
「奇跡は奇跡的には起こらない」
韓国で民主化を実現し、小渕恵三首相とともに1998年、日韓共同宣言を出した金大中大統領の言葉である。(編集部・中原一歩)
※AERA 2019年1月28日号