「多くの親御さんが抱くのは漠然とした不安です。海外に行くのだから相応の不安はあるのが当然ですが、他の国とは違うのは、韓国人は日本人が嫌いで敵視しているという先入観があることです。例えば北方領土の返還交渉が話題になっても、ロシアへの渡航をやめさせてほしいと連絡がきたことはありません。韓国と似た歴史認識の問題を抱える中国ですら、そういう例は聞いたことがありません」

■横たわる歴史認識問題

 なぜ日本人は韓国に過剰に反応するのか。日本人の対韓感情について6年前から調査してきた「言論NPO」の最新調査(2018年)によると、日本人の韓国に対する印象は「良くない」が46.3%、「どちらともいえない」が30.8%、「良い」が22.9%だった。

 良くない印象を持っている理由は、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」が最も多く69.3%。「慰安婦問題」が30.5%。「竹島をめぐる領土対立があるから」が27.6%と、上位三つが歴史認識の問題に起因していた。

 言論NPO代表の工藤泰志さんは、韓国への印象は観光で旅行に出かけたり、ビジネスで一緒に仕事をしたりという「直接的」な体験を持つ人と、国内のテレビや新聞、週刊誌、ネットなどメディアの「間接的」な情報しかない人とで大きく異なるとみる。不必要に対立をあおるメディアの責任は大きいと断言した上でこう分析する。

「歴史認識というよりも韓国の政治のガバナンスの問題が大きい。国内の支持率が落ちると反日を持ち出して支持率を得ようとする。その歴代の政権の体質にあきれている、しらけているというのが日本人の本音ではないか」

 一方、若い世代では韓国に良い印象を持つ割合が高い。

 日韓の若者の政治動向に詳しい早稲田大学文学学術院文化構想学部の金敬黙教授は、日本と韓国のミレニアル世代は「自国の歴史を知らない」という共通の認識を持っていると考えている。

「今の日本と韓国の若者は生まれた時から同時代性の中で生きています。質はともかくとして、お互いに先進国であることを認めている。だから他の世代と違って両国の関係が必ずしも歴史問題だけに集約されないんです」

 一方、親世代に代表されるように、韓国に「悪い印象」を抱く50代以上の日本人は多い。韓国に留学経験のある新聞記者の男性(55)によると、その傾向はリベラルな知識人層も例外でないという。この記者は、現在の日韓関係を「急にタメ口になった弟と、それを認められない兄」に例える。

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