世代交代はベテランに訪れる宿命だ。だが、そのスピードが想像以上に速いと感じたファンは多かったのではないだろうか。開幕5戦目でスタメン落ちした巨人の坂本勇人だ。
今年は侍ジャパンのメンバーに内定していたが、出場辞退を決断。前年に度重なる故障でシーズン83試合出場に終わり、チームも2年連続V逸。迷惑を掛けた思いが強かったのだろう。スポーツ紙デスクは、「昨年もシーズンで活躍していたらWBCに出場していたでしょう。日の丸への思いが強い選手ですから。悩んだ末の決断だったと思います」と振り返る。コンディション作りに専念して調整を積み重ねていたが、春季キャンプ時点で異変が生じていた。
「強いスイングを心がけるあまり、坂本の持ち味であるバランスが崩れていたように感じました。飛ばそうという意識が強くなり、体の開きが早くなり甘い球もきっちり捉えきれていない。坂本の守備力があったら、打率.280、15本塁打で十分だと思うんですけどね」(他球団のスコアラー)
3年ぶりの覇権奪回を狙う巨人が変革期を迎えているのも、坂本の取り組みに影響を及ぼしていたのかもしれない。原監督が春季キャンプ中盤に、レギュラーとして挙げた選手は中田翔、丸佳浩、岡本和真の3人。坂本の名前はなかった。
巨人を取材するスポーツ紙記者はこう語る。
「昨年のパフォーマンスを考えたら致し方ない。打率.286、5本塁打に終わり長打力が落ちたことが指摘されていた。足が速い選手ではないため、長打力を取り戻してほしい思いが首脳陣にもありました。侍ジャパンがWBCで長打力でも世界の強豪国に引けを取らなかったように、少々確実性がなくても長打を打てる選手を打線に置くのが、メジャーでもトレンドになっている。5,6番で走者をかえす役割を考えた時に、打率.270、25本塁打を打てるようなスタイルになってほしい思いがあったと思います」
だが、打撃で試行錯誤を続けて思うようにいかない。オープン戦は36打数4安打で打率.111。オープン戦は例年成績が良くないが、異変は明らかだった。長打力と遊撃の強肩が魅力のドラフト4位・門脇誠、攻守でレベルアップしている中山礼都が好成績でアピールする中、世代交代がささやかれるように。
開幕後に早い段階で1本の安打が出ていれば、状況は全く変わっていたのかもしれなかったが、暗いトンネルからなかなか抜け出せない。「6番・遊撃」でスタメン出場した中日との開幕3連戦は無安打。3戦目に同点の7回無死一、二塁で迎えた好機では犠打を決めた。スタンドからどよめきが起きたが、現在の状態を考えれば当然の策だろう。