経団連会長の発言は、これまで慣行となってきた日本型就活の大転換を示唆する。グローバル化が進むなか競争力を高めるために、日本企業にいま変化が求められている。
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経団連が採用の日程について采配するのは違和感がある──。
これまで加盟企業の採用活動を縛ってきた経団連の会長自らの発言が波紋を呼んでいる。
中西宏明会長(日立製作所会長)は9月3日の記者会見で、会員各社を対象に採用のスケジュールなどを定めた「採用選考に関する指針」(就活ルール)を2021年春入社から廃止すると言及した。現在の就活ルールでは、毎年3月1日に、翌年4月に入社する新卒社員向けの会社説明会などの広報活動を解禁、6月1日を面接などの選考解禁日と定めている。
しかし、経団連に加盟していない新興企業や外資系企業は就活ルールに縛られないし、加盟社のなかにも早期に採用活動を行う企業がある。マイナビの調査では、5月末時点ですでに内定を得ている学生が60.3%に上った。「就活ルールは形骸化している」という指摘は多い。
だが、マイナビHRリサーチ部の栗田卓也部長は言う。
「就活ルールによって一応の起点が定められていることで、学生にとっては就職活動の全体感をつかむ目安となっていました」
雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんも、過去の例を挙げ、就活ルールの廃止に反対する。就職協定が廃止されてから倫理憲章が強化されるまで、1997年から04年の7年間は実質的にルールがない状態だった。
「その間に起こったのは就活の超早期化でした。あるメーカーが2年生の終わりに実施する採用直結型インターンシップを打ち出したところ、多くの企業が追随した。最終的に2年生の冬休みにまで就活が早まって、学生は学業にまったく打ち込めなくなりました。企業側も、内定を出してから卒業まで2年間も学生を囲い込まねばならなかった。就活ルールを廃止すれば、同じことが起こります。学生にも企業にもマイナスです」
会長発言の真意は、形骸化したルールへの警鐘だろうという。