――でも、名大だから改革ができたんですよね。

 それはそう。こぢんまりしていたから。2017年にニューロサイエンス研究センターを創設してセンター長をやってきましたけど、これは東大や京大だったらできなかったかもしれない。組織が大きいから。名大だと、筋を通して交渉を続ければ、総長までスッと話が通る。そういう意味で、女性の施策が進んだ面もあります。

退官記念シンポジウムを名古屋大学で開いた日、ホワイトボードには親(P0)のシドニー・ブレナーから一代目の子(遺伝学でF1と書く)のロバート・ウォーターストンが生まれ、2代目(F2)のイクエ・モリが生まれ、3代目(F3)がたくさん生まれたという「家系図」が書き込まれた=2023年3月22日、森郁恵さん提供
退官記念シンポジウムを名古屋大学で開いた日、ホワイトボードには親(P0)のシドニー・ブレナーから一代目の子(遺伝学でF1と書く)のロバート・ウォーターストンが生まれ、2代目(F2)のイクエ・モリが生まれ、3代目(F3)がたくさん生まれたという「家系図」が書き込まれた=2023年3月22日、森郁恵さん提供

――この3月で定年を迎えられました。

 これからも、ニューロサイエンス研究センターに所属して、線虫の研究を続けます。生き物というのは、住む場所が居心地が良いと思ったらそこに居続けますよね。でも、その場所の環境が悪くなって食べ物がなくなったら、ほかの場所を探す。保守的に振る舞って同じ状況にとどまるか、変化を求めて探索行動に出るか。この2つの生きるための行動戦略の切り替えを、線虫も人間もやっている。この仕組みを神経ネットワークのレベルから神経細胞や遺伝子のレベルまで落とし込んで全体像を理解したい。それは線虫ならできるんです。

 あと、10年ぐらい前から、私たちは腸が脳にすごく影響していることを線虫の研究から見つけているんです。最近、「腸脳相関」と言われて、社会的にも注目されている。これは大事なことで、それも研究しようと思っています。

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