――その自信はどこから?
小さいころたくさんの人に可愛がられて自己肯定感が高かったことが影響していると思います。
私は普通のサラリーマン家庭に生まれたんですが、父方も母方も私が初孫だったんです。母は3姉妹の末っ子で、おじいちゃんは私が生まれる前に亡くなっていて、だからおばあちゃんはすごく苦労しています。でも、明るい感じで、母のお姉さん2人は、妹の子どもである私をものすごく可愛がってくれた。
父は長男だった。良いか悪いかは別問題として、長男を重んじる日本文化の影響を受けることで、私も私の弟もみんなに大事にされた。それはやっぱり自己肯定感につながる。
母方の2番目の伯母は生涯独身で、おばあちゃんと一緒に住み、働いて生計を支えた。私には何でも買ってくれました。ランドセルを買いに行ったときも伯母さんと一緒。デパートみたいなところに行くと、赤と黒のほかに黄色があったんです。私、当時は黄色が大好きだったから、これがいいって言ったら、親も伯母さんも「郁恵ちゃん、本当にこれでいいの?」って何度も聞く。すごく念を押されるんですよ。不思議に思いましたが、「そう、これがいいの」って言って、買ってもらって、6年間黄色ですよ。
何ていうか、私は否定されたことがないんですよ。学校で否定されることはあって、小学校でいじめにあったこともある。クラスのみんなが一時期まったく口をきいてくれなかった。中学校では先生から言葉の暴力を受けた。そういう嫌なことがあっても、私は間違っていないということは親たちが証明してくれるんです。私を肯定してくれるから。だから、親とか親族にはすごく感謝しています。
――なるほどね。生物学に興味を持ったのはいつごろですか?
高校のときにコンラート・ローレンツの動物行動学の本を読んで、ですね。日本語訳された彼の本は全部読みました。それと、時間があるとよく上野動物園に行っていました。動物好きなので。休講があると一人で行って、サル山を見ていました。ぼんやりとサルたちの動きを見ていると、人間社会の縮図のようで、とても面白いんです。