そして思い出した。見舞ったときにゆっくりと胸を上下させていた祖母の穏やかな呼吸。握った手の温かさに、どこまでも静かだった空間。私は祖母を可哀相の枠に押し込んでいたけれど、祖母はどこまでもまっすぐに生きていた。可哀相なことも憐れむこともない。少なくとも、私が勝手にジャッジしていいものじゃない。

『植物少女』はまさしく「生きる」を真正面から描いた作品である。読み終えたとき、誰もが生きるという言葉を、意味を、もう一度考え直すことだろう。

 そしてまた、本作は「母と娘」のひとつのありようを描いた作品であることも記しておきたい。母の体に触れ、呼吸を重ね、そして最後まで生き抜いた姿を傍で見つめ続けた娘は、母と過ごしたからこその成長を経た。母は瞬間を真摯に生き繋げたことで、娘に「生きる」という最も大事なことを教え繋ぐことができた。この母娘の、この母娘しかできない交わりの尊さに、私はいまも魅了されている。

※「一冊の本」2023年2月号より

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