こども宅食 成澤廣修さん(51)/文京区長。NPO法人などと連携し子どものいる生活困窮世帯に食品を届ける「こども宅食」を展開。この事業への注目度は高く、2017年12月末時点で7800万円超の寄付をふるさと納税で集めた(撮影/伊ケ崎忍)
こども宅食 成澤廣修さん(51)/文京区長。NPO法人などと連携し子どものいる生活困窮世帯に食品を届ける「こども宅食」を展開。この事業への注目度は高く、2017年12月末時点で7800万円超の寄付をふるさと納税で集めた(撮影/伊ケ崎忍)
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 貧困家庭への支援事業を行うNPOは多い。そうしたNPOと地域が手を組むことで安定的な支援を行う挑戦的な取り組みが東京都文京区の「こども宅食」事業だ。

 貧困家庭の子どもに、1~2カ月に一度、食品を届ける。そこまでは他にも例があるが、注目すべきは五つのNPO法人などとコンソーシアムを形成したことだ。区長の成澤廣修さん(51)は言う。

「NPO法人はさまざまな貧困支援のノウハウを持っていますが、家庭の貧困は外部からは見えません。これまではこども食堂など『場』を提供するしかなかった。自治体が持っているデータを活用すれば、本当に支援を必要としている家庭にピンポイントでリーチできます」

 子どもたちを支援する上で、重要なポイントは二つ。

 一つは、利用者に「恥ずかしい」という思いを抱かせないこと。もう一つは、申請手続きをできる限り簡単にすることだ。

 こども宅食は、LINEアプリを利用してQRコードを読み込めば、簡単に利用の申し込みができる。食品の配送も、高齢者の宅食事業を行う宅配業者が担うため、周囲の目を気にする必要もない。運営資金を「ふるさと納税」で集めている点も大きなポイントだ。

 このように、社会的課題に対して官民が連携してアプローチする手法を「コレクティブ・インパクト」と呼ぶ。

「渋谷区でも、ふるさと納税を財源として塾代の補助事業を行っていますが、これも同様の手法です。このスキーム自体は地域を問わず応用が可能だと思うので、今後は教育だけでなく、障害者や高齢者の支援にもつなげられるといいですね」(成澤さん)

(ライター・澤田憲)

AERA 2018年2月5日号より抜粋