東工大は、ここで学んだ人材が社会に出てイノベーションを起こすことを目指している。それは、1881年に設立された東工大の前身、東京職工学校以来の伝統でもある。

「イノベーションの源泉は多様性にあります」と、益学長は言い、野球チームづくりに例えて多様性の大切さをとく。

「筆記試験による大学入学者選抜は、100メートル走で足が速い人から順番に選んで野球チームをつくるようなものです。でも、本当に強いチームをつくるには、足の速い人だけではなく、球を投げられる人、打てる人、持久力のある人など、さまざまな能力を持った人がほしい。学術分野もまったく同じです。なので、いろいろな評価軸を用いて秀でた人を集めたい。そんな入学者選抜が理想形だと思います」

 そして益学長は「これは冗談半分なんだけど」とことわったうえで、こう語った。

「例えば、20人のアドミッションスタッフを雇って、その一人ひとりに25人の合格決定権を与える。全国を行脚してもらい、『東工大はこんな人間がほしい』というアドミッションポリシーに沿った500人の合格を決めてきてもらう。残り500人は入試で決定する。そんな選抜システムが実現できれば、より多様な人材を確保でき、かつ教員はより一層教育に注力できるようになる。すると、よい学生が育つと思う。それが夢なんです」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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