東京工業大学の益一哉学長(写真/米倉昭仁)
東京工業大学の益一哉学長(写真/米倉昭仁)
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 必死に受験勉強をして憧れの大学に入学したものの、「こんなはずじゃなかった……」。それまで思い描いていたこととのギャップにストレスを感じてしまう新入生は少なくない。これに対して、東京工業大学の益一哉学長は「高校生のときに考えていたことと違っていたなんて、当たり前のこと。でも大学に入って1カ月では何もわからない。むしろ、『こんなはずじゃなかった』と考えるのは成長する過程のワンステップ。なので、焦らなくていいと言いたい」と、エールを贈る。

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 入試で燃え尽きない人とは、どんな人だろうか?

「入学したとき、自分は何をしたいのだろうか、と考える人は伸びます。そもそも入試は一つの基準にすぎません。入学試験の成績と卒業するときの成績には相関がありませんから」

 と、益学長は言う。

 入試結果と卒業時の成績に相関関係がみられないことは東京理科大学や東北大学、早稲田大学などの調査でも明らかになっている。

「受験勉強が得意なことと、その後の人生で研究者や技術者として大成することは全く別の話です。重要なのは何を学ぶかであり、考え続ける意志を持つことです」

進む道は方向転換してもいい

 大学で学びたかったことと、実際の大学の勉強にギャップを感じてしまうのは、ある意味、仕方ないことだという。

「先日の入試説明会で『量子コンピューターを勉強したい』という高校生がいました。もちろん、それは結構なことですが、ぼくらからすれば、量子コンピューターの何をやりたいのか、ということなんです」

 量子コンピューターの基本原理を学びたいのか、それとも量子コンピューターでしかできない問題を解いてみたいのかでは、専攻分野がまったく異なる。

「そこで、君はどれをやりたいの、と仮に尋ねたとしても、量子コンピューターが何であるかを深く理解していない高校生に答えられるわけがない。それが簡単にわかるくらいなら、ぼくらは量子コンピューターでこんなに苦労しません(笑)。量子コンピューターにつながることはさまざまな研究室で行われています。でも、それを高校生が見学したとしても、そこで何が行われているかを十分に理解できないでしょう。なので、ぼんやりと、科学技術をやってみたい、くらいの気持ちで大学に入ってきても大丈夫です」

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