●冬だって観光資源
だが、経営不振と度重なる不祥事がJR北海道の意気を削ぎ、今や「ななつ星」のようなクルーズトレインはおろか、小規模の観光列車すらほとんど運行されていない。水戸岡さんには、それが歯がゆい。
「どこにもないオンリーワンの車両をつくろうと本気で取り組まないと、沿線の人たちを元気にすることはできない」
飛行機や船と違い、正確で、何かあったらいつでも降りられるという安心、安全感があるのが鉄道旅の良さ。そういったメリットを生かしていけば、北海道は再び「鉄道王国」になれると水戸岡さんは語る。
「今は『ゆっくり走れる』『何もない、手つかずの自然がある』ということに商品価値がある」
長大なローカル線が人口希薄地帯を走る北海道だからこそ、それは実現できる。厳しく長い冬も、唯一無二の観光資源だ。
「北海道には気候、自然、文化、食事などの観光資源が豊富。北海道のオンリーワンの良さを鉄道会社が本気で手間ひまかけて掘り起こし理解しようとしていないから、いつまでたってもスピードアップに商品価値があると思い込んでいるのでは」
●石狩川との並走も見所
では、北海道で理想のクルーズトレインを走らせることはできるのか。水戸岡さんを始め北海道を愛する識者に夢のプランを考えてもらった。
北海道の鉄道地図を見ると、長万部から室蘭→苫小牧→帯広→釧路→網走→旭川→札幌→小樽という回遊コースが描ける。ここに「ホテルが走っているような」ファミリークルーズトレインを昼夜を問わず常時周回させ、それに連動する形で各ターミナル駅から根室や稚内などに観光列車を走らせるという形が考えられると水戸岡さんは語る。
「鉄旅オブザイヤー」審査委員長で紀行作家の芦原伸さんと、「旅と鉄道」などの雑誌を編集する「天夢人」のスタッフにも考案してもらった。1泊2日のパターンで夏に新千歳空港を出発する場合、まずは千歳線で札幌、それから小樽に向かう。新千歳空港駅には専用ホームも設ける。
小樽からは引き返して札幌で下車し観光、そこから旭川に向かい、バスに乗り換えて駅から少し遠い旭山動物園やラベンダー畑などを観光、再び富良野で鉄道に乗り換える。そこからは夜を通して釧路、もしくは根室まで走り切り、そこで朝を迎える。釧路~根室間の通称「花咲線」は海にも近く眺めは絶景。その後は引き返して釧路、帯広を観光し、石勝線で新千歳空港に帰ってくる。