「新幹線との接続を考えて、新函館北斗もしくは函館からスタートするというルートも考えられます。下車して観光するより、車内で楽しんでもらうことをメインにします」(天夢人)

 2泊3日の場合、夜行で釧路、根室に向かうまでは同じだが、次の日は釧路から前出の釧網線を楽しみ、網走からは石北線に入って旭川へ。そこから夜を通して宗谷線を北上し、3日目の朝を稚内で迎える。その後は来た道を戻って旭川、札幌、千歳と戻っていくルートだ。

「石北線で石狩川と並走する区間も見所です」(天夢人)

 札幌市生まれのフォトライター、矢野直美さんも上記のルートを推す。07年に廃止された夜行特急「利尻」の下り列車に乗ると、稚内につく直前に車窓から利尻島の利尻山、通称「利尻富士」が見えたという。北海道の醍醐味である長大路線をじっくり楽しめるコースだ。

●観光列車運行の実現を

 もっとも天夢人スタッフも矢野さんも、北海道にまず必要なのは冒頭の道南いさりび鉄道で成功を収めているような小規模な観光列車だと強調する。

 16年に北海道は観光列車運行に向けた検討会議を立ち上げて矢野さんも参加。現行の気動車を改造し旭川~滝川を走る「地域連携型」プラン、ディーゼル車2両を新造して旭川~帯広~釧路~網走~旭川を2泊3日で走る「北海道満喫型」プランの二つをシミュレーションした。前者の道内産業への経済効果は1.3億円、後者は2.8億円と試算している。これらのプランでは道東をクローズアップしているが、函館近辺のイカ、十勝地区のスイーツ、岩見沢のワイン、釧網線の地形を楽しむジオ・トレイン、バスなどの二次交通と連携すればかつてブームとなった旧国鉄広尾線幸福駅跡などの鉄道遺構ツアーなども検討できる。

「一足飛びにクルーズトレインをつくるのは難しい。既存車両を改造するだけでも北海道の魅力を伝えるショーケースのような列車はつくれます」(矢野さん)

 来年度にも、観光列車の実証実験を行う予定だという。

AERA 2017年7月31日

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