●精度の高い未来予測
検査ビジネスの広がりとともに注目されているのが、検査によって集まるデータの集積、「ビッグデータ」の活用だ。検査ビジネスに参入する会社も、
「得られるデータを統計的に分析し、各自治体・健保に納入している」(KDDI)
「ビッグデータをベースにAIなどの技術を活用し、ユーザーに個別適合したソリューションの提供を考えている」(WINフロンティア)
など、新たな研究成果を得ようとする動きをみせている。
検査結果のビッグデータ化で何が得られるのか。大きいのは、より精度の高い「健康予測」が可能になることだ。
簡易検査で得た結果については、値が標準値とずれていることはわかっても、その人にとって異常値かどうか正確に判断することは難しい。だが大量の検査結果が集約され、それが一人一人の医療情報と結び付くことで、「タイプAの人は病気Bになりやすい」などの予測が可能になる。
村下教授は、研究から健康と関連性が高そうなメタボ、口腔内環境、骨粗しょう症、認知症検査といった検査項目をピックアップして組み合わせた「新型健診」を開発したいとも語る。
「研究が進めば、これらの項目の数値によって特定の個人が今後どういう健康状態になっていくか、高精度な予測ができるようになる。健診データをその場でフィードバックし、かつ予測に基づいた健康指導まで行えば、その人の行動を変化させることができます」(村下教授)
健康に対する予測の精度が高まれば、派生するビジネスの拡大にもつながる。日本中の企業が弘前大に注目するゆえんだ。
ビッグデータを健康増進につなげるべく、医療分野では内閣官房が今年1月、民間機関が個人の医療情報を集めて分析できるようにする次世代医療基盤法案を提出。3月には閣議決定されている。厚生労働省が推進しようとしているのは、個人のライフログ(睡眠時間や運動などの生活データ)や健康診断、医療データを統合したデータベース「PeOPLe」(ピープル、仮称)だ。病院や学会、企業が抱え込んできた情報を個人を軸にしてつなぎ、医師などの関係者や本人が健康増進やケアに活用できる。さらにデータを匿名化し、産学官が活用するプラットフォームを構築する。