体がダルい。どうにも頭が重い。でもはっきりと名前が付く病気というわけではないから、病院には足が向かない。そもそも、平日の昼間に仕事を抜け出す余裕なんかあるわけない。これが、過剰労働社会ニッポンの「現実」だ。AERA 2017年4月24日号では「ダル重」を大特集。あまたある健康ビジネスに踊らされることなく、このダル重を解消するには、どうしたらいいのだろうか。
いま、「簡易検査」という新たなサービスが広がっていることをご存じだろうか。ターゲットは、国民病ともいえる「ダル重」を抱えた働く世代。自宅や外出先で簡単にできる検査はどんな「思惑」のもとに行われているのか。
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歩くスピードが遅い人やアレルギー性の強い人は、そうでない人よりも認知症の一歩手前の症状である軽度認知障害(MCI)になりやすい傾向にある。認知機能の低下の前兆として現れるのは、握力や骨密度の低下──。
こんなゾクッとする「仮説」を次々に生み出しているのが、国立大学法人弘前大学(青森県)。
仮説といっても思いつきではなく、背景にあるのは膨大なデータ。日本一の短命県「青森」を変えようと、12年前から旧岩木町(現弘前市)の住民を対象に、最大600項目にも及ぶ検査を延べ2万人に実施。それを分析し、新たな発見につなげようとしているのだ。
2013年には文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム」(COI STREAM)に選ばれ、GEヘルスケア・ジャパンや花王、ライオンのほか、イオンなどの流通から不動産まで、あらゆるジャンルの企業がプロジェクトに参加している。プロジェクトを率いる弘前大の村下公一教授は言う。
「医学の研究はまず仮説を立てそれを検証する形でやってきたが、今回のプロジェクトは網羅的にいろんなファクターをチェックできるのが画期的」
病気になった人のデータは病院などに集まるが、健康な人のデータがこれだけの規模で集まるのは「おそらくここしかない」(村下教授)。その人の遺伝子構造や生理学的分析に加え、生活様式なども問診形式で詳細に聞き出し、どの要因がその人の健康状態を決めているのかを調べ上げた結果、冒頭のような仮説が生まれたのだという。