建て替え前(上)の阿佐ケ谷住宅。昭和のたたずまいは趣があったが、老朽化が進んでいた。建て替え後(下)は緑を多く配し、周辺の環境にも配慮した。当初は計画に反対していた地元の理解も得られたという(上=写真提供:野村不動産、下=撮影/編集部・鎌田倫子)
建て替え前(上)の阿佐ケ谷住宅。昭和のたたずまいは趣があったが、老朽化が進んでいた。建て替え後(下)は緑を多く配し、周辺の環境にも配慮した。当初は計画に反対していた地元の理解も得られたという(上=写真提供:野村不動産、下=撮影/編集部・鎌田倫子)
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東京23区内の旧耐震基準の分譲マンション(東京都「マンション実態調査」から)
東京23区内の旧耐震基準の分譲マンション(東京都「マンション実態調査」から)

 近所づきあいはほどほどに、自由気ままなマンションライフ。だが地震で建物が被害を受けると、復旧は容易ではない。とりわけ、1981年以前に建てられた物件の対策は急務だが、日ごろの交流の希薄さもあってか、「住民の合意」という名の壁が立ちはだかる。

 地震発生から4カ月以上たった今も、復旧は遅々として進まない。本市内に購入したマンションが被害を受けた坂田彰さん(44)=仮名=は、焦りといら立ちを隠せない。

「管理会社からは、改修に総額いくらかかるかの報告もない。住民の負担額もわからないから、進めようがないんです」

 築17年、2棟に計89戸のファミリータイプ。棟をつなぐ渡り廊下は真っ二つに割れ、壁には大きなひび割れが入った。建物の倒壊危険性を調べる「応急危険度判定」では、「危険」の赤紙が貼られた。

 管理会社と区分所有者の住民との間で最初の話し合いが持たれたのは、地震発生から約1カ月後。管理会社は「マンション自体は安全。基礎は問題ない」と言うのみで、具体的な話はなかったという。共用部分には地震保険がかけられていたが、「半壊」なら保険金額の50%が支払われるところ、認定結果は「一部損壊」だった。

「もう一度検査してほしいと住民から声が上がったが、覆りませんでした」(坂田さん)

●勝手に足場で9百万円

 結局、下りた保険金は5%の1300万円。さらに、落胆する住民に追い打ちをかける出来事が起きた。損壊した渡り廊下に、突如として「足場」が建設されたのだ。工事は住民との合意もなしに管理会社により一方的に進められ、事後に「費用は900万円」と告げられた。

「渡り廊下を行き来できるようにするための措置と管理会社は言っていましたが、業者選定の経緯も不明で、900万円はありえないでしょう」(同)

 被害の大きかった棟には、玄関ドアが開かない住戸が16戸ある。管理会社は、本工事までは仮のドアを設置して、ドア枠の修理が終わってから正規のドアに付け替えると提案した。費用は約300万円という。これには、他の棟の住民から異議が出たため、住民同士で話し合い、先にドア枠の仮工事をすることで、最初から正規ドアを付ける工程に変更した。住民の分断は避けられたが、管理会社への不信感は募った。

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