東大生の親たちは、「合格には母親が秘書となること。最高の塾選びをしたとしても決して塾任せにはしないことが鉄則」と話す(撮影/篠塚ようこ)
東大生の親たちは、「合格には母親が秘書となること。最高の塾選びをしたとしても決して塾任せにはしないことが鉄則」と話す(撮影/篠塚ようこ)
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「東京大学に合格させる」。そう決意してからの道のりは、長かった。願いをかなえた母親の実践録を紹介しよう。

 東大合格は親子で勝ち取った勲章。こう話すのは、東京都世田谷区在住の専業主婦、栗田和美さん(仮名=47)。この春に、次男が念願の東京大学(理II)に合格した。商社に勤務する夫の経済力と2歳から始めた幼児教育が役立ったという。

 夫は国立大出身、和美さんは短大卒。おっとりした性格で私大卒になった長男の子育て経験を生かそうと、次男には2歳から早期教育にはまった。早期教育に関する本や塾があると情報を得れば、どこにでも足を運んだ。

「子どもに合って、自分の熱意に応えてくれるような最高の塾探しに翻弄され続けました」

 栗田さんのこだわりは揺るぎないものだった。次男が幼稚園に入園したときには、既に平仮名と数字の読み書き、3桁までの足し算、引き算は習得していた。

 次男が通った塾ではフラッシュカードで記憶を定着させたり、積み木で立体的な空間の捉え方をさせた。塾長は生活のなかにも学ぶ楽しさを取り入れることが必要と謳い、子育て方法も指導してくれたので、母親にとってはまさに神。地方から飛行機に乗って面談を希望する人までいた。

 幼児教室をはじめ、プール教室、私立の小学校受験、国立の中高一貫校、大学受験と通塾にかかった料金は、約3400万円。毎月の通塾費に加えて、春、夏、冬の長期休みには講習費がかかった。

「主人には総額いくらかかったかなんて絶対に言えません。定期預金を切り崩したということぐらいは話しましたが、毎月の塾の費用も少なめに申告してきました。まさか、息子の塾代の月謝が、主人の毎月のお小遣いの倍近くだなんて…」

AERA 2014年7月28日号より抜粋