「葬儀戒名、一切いらない。死んだら山にまいてほしい」。そう語っていた女優の木内みどりさんが出張先の広島で急性心臓死で旅立って早4カ月弱。葬儀まで自分らしさを貫いたみどりさんに心動かされ、エコで簡素な葬儀を考えてみた。こんな終わり方があってもいい。
* * *
みどりさんは、亡くなる2カ月前、ラジオの収録でこんな発言をしていた。
「仏事が嫌い。戒名なんていらない。墓にも入りたくない。骨つぼに入れられるのが嫌。山にまいてほしい」
しかも昨年、散骨予定の山の下見も済ませていた。9年前にはこんな遺書を書いていた。
「できれば親しい人たちで、美味しいものでも食べながら、美味しいお酒を飲んで、好きな音楽を流して送ってほしい」
今の一般的な葬儀のあり方に強い問題意識を持っていた。ラジオでも、
「水野(夫)と一緒に、新しいスタイルの葬儀屋をやろうと思っている」
とまで言っていた。
夫で元参議院議員の水野誠一さんは、こう明かす。
「みどりはしっかりと自分の死後を考えていました。骨つぼに入り、ぐるぐると針金で縛られ、墓石の下に眠るなんて、自然に還るとはほど遠い発想。二人で墓じまいをしようか、と話していました」
しかし急逝。本人にとっても驚きだっただろう。一人娘の頌子さんは、みどりさんのフェイスブックにこう書きこんだ。
「ひとり旅先ですっといなくなってしまうなんていかにも母らしく、70代にならず潔くいち抜けするところがかっこよくて、その見事さに少し笑ってしまった」
誠一さんは話す。
「かけつけた娘の頌子と二人で話して、東京に遺体を運ぶのではなく、ここで火葬をしようと決めました。偶然にも1体分の火葬場が空いていた。急でしたが、私と娘、それにかけつけてくれた2人の友人を入れた4人だけで広島で葬儀を行いました」
11月18日に亡くなり、19日に火葬しその足で帰京。23日に、身内を中心にごく親しい人たちだけでの小さなお別れ会を自宅で行った。
「いつもなら朝から皆さんのためにみどりが料理を作ります。しかしそんな彼女がもういません。お酒は用意するから料理は持ってきてください、と伝えて集まっていただきました」