「エコフィン」を支持する人の中には森林保全を目指す一般社団法人more treesの代表を務める音楽家の坂本龍一さんもいる。坂本さん自身も実母を「エコフィン」に納め、見送った。そのときのことを、
「良い形で送ることができて、良かったと思っています」
と振り返る。
入棺体験時のみどりさんの様子を「ウィルライフ」の担当者は、こう思い出す。
「生きることを考える上で、死から目をそらしてはいけない、そうみどりさんがおっしゃっていました。印象に残っています」
『否常識のススメ』という著書を持つ誠一さんは、「木内みどり的死生学」についてこう語る。
「生前、みどりは、『多くの人が、死に無関心すぎる』と言っていました。死こそ人間の一番最後を飾る行為。私は、みどりがした『死の設計(エンディングデザイン)』は見事だと思っています。『否常識』という考え方は、みどりの生き方そのもの。あらゆる常識は疑ったほうがいい」
みどりさんが大事にした「悼む心」を尊重する小さな葬儀を紹介したい。
厚生労働省のデータでも明らかになっているが、近年、自宅で息を引き取る人が減る一方で、介護施設で亡くなる人が増えている。聞こえてくるのは、介護スタッフの、「別れをする機会が欲しい」という声だ。何年間も日々一緒に過ごしてきた介護職員にとって、介護対象者は家族同然。亡くなったと同時に関係者によって遺体が運び出されると、とてつもなく大きな喪失感に悩まされるのだそうだ。介護職員にとって、故人を悼む時間も場もないからだ。そんなニーズから生まれたのが、「訪問葬送サービス そうくる」。主に介護施設などに文字どおり、「そうしき」が「やってくる」。
そこでは読経もない。故人が生活していた空間にコンパクトな祭壇を備えた棺おけが設置されるのみ。故人に会いたい人が、自由に入室できるので、火葬までの間に別れが十分にできる。
この棺おけは「ウィルライフ」が作った「オルタナ」というもの。素材は紙と国産スギの間伐材で、木材の使用を半分におさえ、地球環境にも配慮。ふたを開ければそのまま写真などが飾れる祭壇になり、専用スタンドつきだ。これに納棺、出棺、装飾代、設営代などがついて価格は、税別30万円と50万円の2プランという明朗会計。これまで暮らした居室内で行うため、葬儀会場を探す手間も、会場への遺体搬送もしなくて済む。