主催者がいないホームパーティー。今年の2月13日には、仕事関係の人を中心とした「木内みどりお別れの会」を国際文化会館(東京都港区)で行った。2部制で、合計800人強が集った。
「明るい日差しが差し込む会場で、『こんな明るいお別れ会、初めてでした』とお見えになった方がおっしゃってくれました。みどりも満足してくれていると思います」
会場には、みどりさんの好きだったグレン・グールドのピアノの音楽を流し続けた。さらにこれまでの出演作品を「安ベエの海」から最新作まで、ダイジェスト版に編集して流した。あとは、5月に遺灰をまく予定だ。チベット仏教を信仰していたみどりさんは、ラジオでこうも話していた。
「とっとと忘れてほしい。これが私の一番の希望。お墓参りなんてとんでもない」
誠一さんが続ける。
「こんな感じでしたから結局、葬儀の費用も、これでいいのかな?と思うほど安く済みました。棺おけも上等なものではなく、機能的なものを選びました。それにしても、なぜ人ひとりが死んだら、いきなり葬儀屋さんがやってきて、言われるがまま100万とか300万円とかの葬儀代を払うのでしょう。誰のためにやる葬儀なのか。これこそが、みどりが生前、非常に問題視し、嫌がっていたことです」
今の葬儀はおかしい。なぜカタチにこだわるのか。なぜ、様式にとらわれるのか。なぜ、不要なところにお金をかけるのだろう。
「大事なことは悼む心。いつもみどりはそう言っていました」
葬儀の形式の中でも、自らの意思で幅広く選べないものの一つに「棺おけ」がある。みどりさんは生前、紙の素材を使ったエコな棺おけに関心を持っていた。急死のため入らなかったが、自ら「入棺体験」もしていたという。
記者も数年前に体験した「エコフィン」という棺おけだ。見た目も入った印象も「紙素材」とは感じない。触れるとしっかりと硬い。販売元「ウィルライフ」(東京都港区)によると、素材の一部に紙を使用し、軽量で、燃焼時間も、合板棺に比べ50%減。木材には国産間伐材を使用し、1棺の注文の都度、1本の木をモンゴルに植林している。つまり、地球にもやさしい。