このサービスを利用して旅立った入居者がいると聞き、千葉県柏市にある介護施設の職員に話を聞いた。ひとりは90代の女性で、もうひとりは70代の男性だ。
火葬までの間に6日ほどの日数があったため、毎日介護職員や家族が入れ代わり立ち代わり入室しては、「○○さん、おはようございます」「今日も帰りますね、また明日」と、いつもどおり声をかけていたという。
「思い出のしみ込んだ場所で送られるのは良いし、気負わないでいい。こういう送られ方は今後増えていくと思います」と職員の一人。現場の職員たちも「これはうれしいね」と、満足げだったという。
サービスを提供する「そうくる」の代表は、葬儀の場が、自宅から葬儀会館のようなところに時代とともに移ってきたが、ここにきてまた「ホーム」に戻ってきたと感じている。
「昔の自宅葬とは少し違うかもしれませんが、住んでいたところから送られる。送るのが『近所の人』から『介護スタッフ』へとメンバーが変わっただけの話。そんな場所で送られるということは、幸せなのではないでしょうか」
実際に「そうくる」を利用した一人のお別れのときに、こんな光景も目にしたという。
「施設関係者の方が、『おばあちゃん、ジャムパン好きだったから、今買ってくるね、待っててね』なんて走って買いに行かれて、祭壇に置かれていました」
送る側にも送られる側にも、満足のいく葬儀をしたい。そのためにはどうしたらいいのだろう。
自分の葬儀で何かの社会貢献をしたいと考えるのであれば、「フォーバトン」が始めた「NATURAL FUNERAL」ブランドを利用するのも手だ。葬儀をするたびに寄付金が集められるという仕組みで、葬儀の収益の一部が自然環境保護団体などに寄付される。前出の坂本龍一さん率いるmore treesも応援している。
葬儀相談員である市川愛さんは、「従来の葬儀が環境に配慮していないとは感じていません」とした上でこう話す。
「葬儀がだんだん『個』をあらわす『個』のものになっている流れの中で、意思表示の一つとして、環境に配慮する葬儀が求められることはあると思います。送る側も納得感が増すでしょう」
葬儀は自分らしさを見せる最後の舞台。そこにエコな発想があってもよいだろう。みどりさんのように。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2020年3月20日号