「組織のトップは損得計算で動きます。そして、損を考えて変化を嫌がり、責任を取りたがらない。日本には横並びで右にならえ的な文化があるために、他が動いたことで追随したのでしょう。ただ、見通しは予想されていただけに、政府の要請はもう少し早く出してほしかった」
こうした状況のなか、国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会のジョン・コーツ委員長はオーストラリア紙の取材に対し、東京五輪を予定どおり開催するかを3カ月以内、つまり5月下旬までに判断するとの姿勢を示した。
IOCのトーマス・バッハ会長は27日の日本メディアとの電話会見で「臆測の炎に油を注ぐことはしない」と話したものの、コーツ委員長らの発言に対する質問には直接答えなかった。IOCは今後、中止も視野に入れながら検討していくとみられる。
3月には聖火リレーが始まるが、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は28日、規模縮小も視野に入れていると改めて述べた。
組織のトップのあるべき姿について、菊澤教授は言う。
「主体的な価値判断が求められます。倫理観と言い換えてもいいかもしれません。合理的な損得ではなく、現状を受けて、損をしてでも大きな決断ができるか。各組織のリーダーとしての見せ場だと思います」
(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2020年3月13日号