小池精米店では一般向けのコメの販売もするが、8割が卸だ。「つきあかり」のほか、「萌えみのり」「ちほみのり」「ゆきん子舞」などの多収米を販売し、今年は卸の4割が多収米になる見込みだという。
これまでに、コシヒカリより3~5割収穫量の多い「大粒ダイヤ」、コシヒカリより多収ながら食味が近い「あきだわら」、三井化学アグロが育成したハイブリッドライス「みつひかり」を扱ってきた。そんな中、今は「つきあかり」が推しなのだという。
こうした多収米を、消費者がふつうに購入できる店が出てきた。
「高坂米店」(東京・新御徒町)では、「つきあかり」と「ちほみのり」の2種を店頭販売している。同店代表で五ツ星お米マイスターの高坂和延さんは、
「店頭で売る中で最も低価格なのが、この『つきあかり』です」
と話す。価格は、最も高いブランド米「龍の瞳」の3分の1となる1キロあたり500円(税込み)だ。
「個人的な意見ですが、私は新潟のコシヒカリが落ちつきます。甘みがあって、私にはコシヒカリが王道なんです。でも、コシヒカリ一辺倒ではなくなってきているのは事実。多収米はこれからだと思います」(高坂さん)
「名前はわからないけれど、薦めてくれるなら」と多収米を買っていったお客さんもいるという。
また、大手スーパーの西友では、多収米の「萌えみのり」(宮城産、5キロ1680円<税抜き>)を販売している。
農研機構は全国6カ所の研究機関でそれぞれの地域に適した水稲品種の開発を進めており、特に近年は業務用や加工用の品種の開発に力を入れている。三井化学アグロや豊田通商などの民間企業も多収米を開発している。
多収米が注目される背景は何か。
コメの需要は、家庭消費用のものと、中食・外食に向けた業務用のものとに大別される。これまで農家の多くが、
「コシヒカリに追いつけ追い越せ」
と家庭消費向けにブランド米を多く作り、価格も上がってきた。一方で、コメの消費は年々減少している。