(写真右から)「高坂米店」代表で、五ツ星お米マイスターの高坂和延さんと、店内で販売する「つきあかり」/令和元年産の「つきあかり」の米粒/炊きたての「つきあかり」 (撮影/大崎百紀)
(写真右から)「高坂米店」代表で、五ツ星お米マイスターの高坂和延さんと、店内で販売する「つきあかり」/令和元年産の「つきあかり」の米粒/炊きたての「つきあかり」 (撮影/大崎百紀)
(写真左から)「コシヒカリつくばSD1号」(右)は通常のコシヒカリ(左)と比べて稲の背丈が低いため、倒れにくい=提供・住友化学/出穂後20日の「コシヒカリつくばSD1号」(左)と通常のコシヒカリ(右)=提供・住友化学
(写真左から)「コシヒカリつくばSD1号」(右)は通常のコシヒカリ(左)と比べて稲の背丈が低いため、倒れにくい=提供・住友化学/出穂後20日の「コシヒカリつくばSD1号」(左)と通常のコシヒカリ(右)=提供・住友化学
多収米一覧リスト1/2 (週刊朝日2019年11月8日号より)
多収米一覧リスト1/2 (週刊朝日2019年11月8日号より)
多収米一覧リスト2/2 (週刊朝日2019年11月8日号より)
多収米一覧リスト2/2 (週刊朝日2019年11月8日号より)

「多収米」という言葉を聞いたことがありますか。文字どおり、多く収穫できるコメのことです。主に中食・外食業界で流通している業務用米で、ブランド米より安いのが特徴です。ところが、最近はコシヒカリ以上の食味の品種が開発され、一般家庭用に販売されるものも出てきました。安くて、うまいコメを買える時代になろうとしています。

【多収米一覧リスト】品種別 特徴などをご紹介

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 五ツ星お米マイスターで、創業89年の小池精米店(東京・原宿)の小池理雄さんは4年前の11月、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・茨城県つくば市)が主催する多収米の試食会に参加したときのことを覚えている。

「『えっ、多収米って、このレベル!』と、いい意味で驚きました。ブランド米と遜色なく、今すぐ欲しいぐらいでした」

 小池さんが試食したのは、上越などで作付けが進む「つきあかり」。農研機構中央農業研究センターが開発した品種だ。「コシヒカリ」より早く収穫でき、収穫時期がほぼ同じの「あきたこまち」より10%ほど収量が多い。大粒で、うまみ評価も優れている。日本穀物検定協会の食味試験では、炊飯後4時間保温しても見た目は変わらず、おいしさが持続した。

 その理由を農研機構次世代作物開発研究センター稲育種ユニット長の前田英郎さんは、こう話す。

「おコメの表面にある『おねば』といわれる保水膜が多く、おコメにコーティングされているためでは、と考えています」

「つきあかり」という品種名がついたのは3年前。収穫は今年で4年目だ。

 農家からは、

「早く収穫できるし、かなり粒が大きい。このおいしさはこれまでなかった」

 といった声が上がっているという。中食・外食向けに生産の拡大が期待される、多収米のエースなのだ。

 小池精米店は「つきあかり」を昨年から本格発注し、今年の注文は倍に増やした。

「和食屋や焼き肉屋さんには山形のブランド米『はえぬき』を卸していましたが、『はえぬき』の価格が上がってきました。そこで、味が良く価格は1キロあたり約20円安い『つきあかり』を提案したところ、コストパフォーマンスが良いと乗り換えるようになったんです。どこのお店でも評判がいいですね」(小池さん)

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