農林水産省政策統括官付穀物課稲生産班課長補佐の添田孝志さんは言う。

「消費全体は減少しているものの、中食・外食需要は伸びている状況。こうした需要は、一定の品質で、値ごろ感のある価格帯でのおコメを求める傾向にあります。この需要に応えるためには、生産側が収量を上げて生産コストを下げ、収益を確保することが重要。それを実現させる一つの手段として、多収性の品種の導入があるのです」

 また、前出の前田さんもこう語る。

「おコメの消費の割合が中食・外食で3割を超える状況において、すべてが『コシヒカリ』じゃなくてもいいのでは、という声はやはり出てきています」

 どういうことなのか。

「これまでは、おコメの生産といえば家庭内消費に向けたブランド品種ばかりでした。『コシヒカリ』『ひとめぼれ』『あきたこまち』などに加え、『ゆめぴりか』『つや姫』など。さらに新しい品種が家庭向けに出てきた。でも、我々はそういうのではなく、業務用でも多収でおいしい品種があるならば、ブランド化しなくてもいろんな選択肢があってもいいと思っています」

 農家のあり方も変わってきた。

「担い手が不足し、大きな法人に農地を預ける農家も多くなってきている中で、100ヘクタールぐらい耕作する法人がたくさん出てきています。そこで全部コシヒカリ、というわけにはいかないわけです。販路も家庭用だけではなく、業務用のものを入れて総量で収益を上げて経営安定を図るという動きがあります。(多収米は)農家の人たちにも選択肢が増えるということにもなりますし、消費者にとってもおコメの単価が下がるということが考えられます。双方にとってメリットが大きいと私は思っています」

 最後にJAが栽培する多収米も紹介しよう。

「JA秋田おばこ千畑『米の精』減・減栽培部会」は、「箱入り娘ゆめおばこ」をデビューさせた。担当者によると、

「粒も大きい品種で食べ応えもあり、おいしい。全国のすしチェーン店など業務用で使ってくれるところもあり、手応えを感じています」

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