ちなみにワインビネガーを熟成させたのが、有名なイタリアのバルサミコ酢だ。ワインはだいたいpHが3~4、つまり酸性の液体だ。が、飲んでもそれほど酸っぱくはない。むしろ程よい酸味(これは酒石酸やリンゴ酸などにより)が感じられる。ちなみに日本酒のpHはだいたい4以上5未満だ。しかし日本酒もまったく「酸っぱく」はない。
ワインの「酸味」を最初はよく理解できないかもしれない。「酸味」はいわゆる「酸っぱさ」ではないからだ。むしろ、舌を心地よく刺激する独特な風味だ。
ワインテイスティングではワインの「酸味」をきちんと味わい、正確に表現できねばならない。酸味を「酸っぱい」と勘違いしていると間違える。酸味は甘みや渋みに比べるとわかりにくい概念だ。
リンゴ酸の豊かな、樽熟成をしていないフレッシュなソーヴィニヨン・ブランなどは酸味がわかりやすい。だから、まずはこういう白ワインで酸味を確かめてみるとよいかもしれない。
液体は、pHが3かそれ以下になると「酸っぱい」と感じるようだ。しかし、ワインの場合「酸っぱい」ワインはたいてい劣化している。また、マロラクティック反応などで乳酸が増えるとむしろワインはまろやかな味になり、「酸っぱさ」とはかけ離れた味覚となる。これは、より酸っぱいリンゴ酸がまろやかな乳酸に変わるためだ。
酸の種類によっても味覚(酸味)の感じ方は変わってくる。pHだけでは説明できないということだ。
■ブドウはアルカリ性食品だが、ワインは酸性
同様に混乱しやすいのが、アルカリ性食品とか酸性食品という呼称だ。これは食べ物のpHとは関係なく、食品に含まれるミネラルが酸性かアルカリ性かで判断している。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムを含む食品はアルカリ性食品、リンや硫黄を含むと酸性食品と呼ぶ。
だから、アルカリ性食品や酸性食品を食べても血液などのpHは変わらない。梅干しなどはクエン酸など酸が多くて「酸っぱい」が、アルカリ性食品だ。ブドウもアルカリ性食品だが、ワインのpHは低くて酸性だ。ややこしい。