「昨年は1次選考の書類審査で9割が通っていましたが、今年は8割弱しか通らなかった。高校時代に何をしてきたのか、大学に入ってしっかりと学べるか、という点を厳しく見たと思われます。他方で、医学科で毎年合格者が増えてきていることなどを鑑みると、受けている生徒のレベルが上がってきているように見えます」

 その他の難関国立大を見ても、明暗が出ている。

 北海道大の充足率は70%と、地元進学校では合格は厳しいという見方が広がっている。大阪大は58%、一橋大は42%にとどまる。一橋大は今年の志願者数を「現時点では公開していない」というが、昨年は41人と、募集人員の50人を下回る。

「AO・推薦入試を受けるとなると、志願理由書の書類作成や面接の準備など、受験生や高校教員にかなりの負担がかかる。こうしたことを踏まえて、合格数を出していない大学を敬遠する動きが考えられます」(川崎さん)

 他方で、東北大や名古屋大、九州大などは募集人員が多い。東北大は全入学者の2割がAO入試で、今年は募集人員を60人増やし、合格者も増やした。河合塾教育情報部の富沢弘和部長はこう見る。

「志願者を集める大学は実績や資格の出願条件が厳しくなく、書類作成への大きな負担もない。志願者を増やすには、書類作成の負担を減らし、面接やプレゼンで評価するなど、受験生や高校の先生の負担を減らすように見直す必要があると思います」

 ハイレベルな学生が集まり、合格はかなり難しいが、毎年のように合格者を出す高校もある。

 東大の推薦入試に強い高校を見ると、日比谷や渋谷教育学園渋谷、桜蔭など関東の名門校が目立つが、最も合格者を出しているのは、県立広島だ。合格は4年連続で、これまでの合格者は7人にも上る。2004年に新設された県内でも有数の進学校で、地元の国立広島大には毎年40人以上合格している。

 文科省のスーパーグローバルハイスクールに指定され、海外語学研修や留学などの機会を提供するほか、論理的な思考力や表現力を身に付ける「ことばの教育」に力を入れている。

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