子育ても楽しかったし幸せだったけどね。自分で自分の世界をやっと生きていけるっていうかさ――。イラストレーターで漫画家のサトウユカさんの最新作『キッチンに住みたい』(はちみつコミックエッセイ)の「お母さん卒業キッチン」の章は、忙しかった子育てを卒業した52歳の母が主人公。自身も子育てがひと段落したサトウさんに、作品に込めた思いを聞きました。

MENU 「子育て卒業」を意識し始めたのは子どもが高校生になったころ キッチンには子どもとの思い出が詰まっている 子育ては楽しかったけど、“卒業後”の人生も楽しみ!

「子育て卒業」を意識し始めたのは子どもが高校生になったころ

――「お母さん卒業キッチン」主人公の碧さんは、社会人の長男、大学生の次男、子どもを産んだばかりの長女のお母さん。夫と離婚して1人、団地に住んでいます。かつてあわただしく過ごしたキッチンで、子どもたちが小さいころを懐かしく振り返りながら、孫を抱く姿が印象的です。

 私も息子たちが大きくなったので、いまの自分の姿や、同世代のママ友の姿を主人公の碧さんに投影して描きました。

 わが子は24歳と21歳。もう成人したし、碧さんと同様、私も子どもたちに料理をつくることもほとんどなくなり「子育て卒業」、「お母さん卒業キッチン」と言っていいかなと思っています。

――いつごろから「子育て卒業」を意識し始めたのでしょう。

 息子たちが高校生になった頃には、“卒業”を感じ始めていた気がします。小学校ではPTAがあったし、中学校では部活に入っていたので、大会のお手伝いなど、親の出番もあったのですが、高校生になったらお弁当を作るぐらい。息子たちが小さいときはあんなに毎日大変だったのに、小学生になってからの時間の過ぎるスピードは速かったですね。

キッチンには子どもとの思い出が詰まっている

――キッチンでの自身の思い出はありますか?

 漫画の中で、幼い長女に炊き込みご飯とハンバーグを出した碧さんが、「ハンバーグには、しろいごはんがよかった~」と大泣きされるシーンがあります。あれは私の次男が小さいころに、本当にそんなふうに泣いたことを思い出して描きました。私としては、「ご馳走+ご馳走、スペシャルな晩御飯だよー!」という思いで作ったのですが(苦笑)。キッチンってこんなふうに、子どもとの思い出がいろいろ詰まっている場所ですよね。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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