ところが、n‐6系(オメガ6系)といわれる不飽和脂肪酸は動脈硬化や血栓形成を促進する働きがあります。実は牛肉や豚肉などにn‐6系が一部含まれているのです。つまり、飽和脂肪酸やn‐6系の不飽和脂肪酸を含む肉類は動脈硬化を促進するため、脳血管性の認知症発症のリスクを高めます。

 一方で、高齢になったら肉類を食べた方がいいという考え方もあるのです。100歳以上の人のたんぱく質の摂取量を調べてみると、平均的な日本人よりも男女ともに総エネルギーに占めるたんぱく質の割合が高く、しかも動物性のたんぱく質の割合が高いというデータがあります。長寿の人は肉好きの人が多いという話がありますが、それを裏付けるデータです。

 また、昨年に東京都健康長寿医療センターが出した健康長寿のためのガイドラインでは、やせと栄養不足を防ぐために肉類をしっかり摂取するように提案しています。

 肉を食べることは体に悪いとも、いいとも言えるのです。私は食べ物に対して、「あれはダメ、これはダメ」とは、考えないようにしています。美味しく食べて、心をときめかせる。それで十分なのです。肉好きな人は、大いに肉を楽しみましょう。

週刊朝日  2018年12月7日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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