

感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。
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「アリストテレス」の著作は、哲学書として扱われることが多い。しかし、アリストテレスの時代には自然科学と社会科学の分断などはなく、知識人は「全て」について論じていた。
アリストテレスは当時としては森羅万象、人文科学とか自然科学とかの区別なく、なんでも相手にするオールラウンドプレーヤーだったといえる。しかし、近代・現代になって学問が細分化され、哲学がいわゆる社会科学の領域に分類されるようになると、自然科学と社会科学の断絶が起きた。
■自然科学では難解なアリストテレスだが、人文科学では「哲学者」
多くの自然科学の専門家にとってアリストテレスは、難解すぎて敬遠される存在となった。一方、人文科学の専門家はアリストテレスを「哲学者」とみなし、自然科学者としての彼を批判的に吟味しない。自然科学的なアプローチで解釈しないし、少なくとも積極的にアプローチしているのは見たことがない。もったいない話だと思う。
哲学を含む、日本の人文科学系の人たちのあくまで一部は、自然科学を目の敵にし、自然科学の領域が発見したり開発したりしてきたことが「現代をダメにしている」という論調に持って行きたがることがある。環境破壊、原発の問題、医療の問題はすべてアロガントな自然科学者のもたらした厄災というわけだ。
■アンチ現代医学、アンチ現代医療で凝り固まりすぎ
時々、「現代思想」(青土社)のような思想系雑誌で医療の特集をしているが、特集の論調はおおむね「現代医療は間違っている」で一貫しており、他の視点がほぼ皆無なのに驚かされる。もう少しいろんな観点から検証したってよさそうなものだが、あまりにアンチ現代医学、アンチ現代医療という史観で凝り固まりすぎている。