特集企画の時点で「結論ありき」な議論に終始しているのだ。現代医療にだって肯定的な側面はたくさんある。もちろん、現代医療の改善点は山ほどあるのは事実だが。


 
 冷静にアリストテレスの著作を読めば、現代の自然科学の観点から明らかな間違いを見つけることができる。ブドウはワインになりたがりはしないし、世界はアリストテレスのいうような「目的論的な」つくりをしていない。

■科学を進歩させる最大の動力源は「間違ったら、認めて直す」こと

 でも、アリストテレスがたとえ「間違っていた」としても、それは少しもアリストテレスの名誉をおとしめるものではない。「間違ったら、認めて直す」。これこそが科学を進歩させる最大の動力源だともいえる。
 
 しかし、自然科学を目の敵にし、自然科学を自然科学の方法論で検討しないと、アリストテレスの誤謬(ごびゅう)は誤謬と認識されない。あるいは「当時としては、仕方なかった」と問題点は、矮小(わいしょう)化されたりする。
 
 学問の細分化がこのような問題を生んだ可能性があるわけで、アリストテレスが細分化ではなく学問のオールマイティーさを売りにしていたことを考えると、ちょっと皮肉な話だ。

■世界史上初めて微生物を発見した「レーウェンフェック」

 話を戻そう。「レーウェンフック」は発酵中のビールを自作の顕微鏡でのぞいてみた。するとそこに、酵母の細胞がいるのを発見した。もっとも、レーウェンフック自身は、自分の見ているものがなんだかわかっていなかったと思われる……。

 酵母の細胞、つまりは微生物のことだ。世界史上初めて、レーウェンフックは「この世に微生物がいる」ことを看破したのである。
 
 彼は顕微鏡を通じて観察した酵母をスケッチし、それをロンドン王立協会に送った。ところが、当時のトップ・サイエンティストたちは「自分が見たこともない微生物」を理解できなかった。

 ロンドン王立協会はこれを完全に黙殺する。

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「バカの壁」が…