菊池の投球フォームを見ると、右足を上げた際に一度ひざを伸ばしてから踏み出す形にしている。しかし、ひざを伸ばしたときにつま先が立ってしまっているから、踏み出した接地の部分で弾力性がない。足首がクッションのように使えないと、体重を乗せて捕手方向に出ていくことができない。単純に言えば、突っ立ったまま投げてしまっている。これでは球場ごとのマウンドの違いにも対応できない。

 選手として常に新しいことにチャレンジすることは大切だが、菊池は9年目。しかも球界でもトップクラスの実績を持った投手になった。その投手がいまだに投球フォームで試行錯誤しているというのは首をひねる。変えてはいけない、大切な部分があって、その上で新しいことにチャレンジしていくのなら素晴らしいが、毎年のように投球フォームを試行錯誤することが、いいとは思わない。

 先ほども触れたが、エースは試合をコントロールする能力が必要だ。だが、菊池はまだ自分と向き合っていることが多すぎる。試合に入れば、対策を立ててきた相手を上回らなければいけない。打者に向かう状況を作らないといけない。

 短期決戦は、エースに対して、相手も研究して、特別な攻め方をしてくる。その相手を上回らなければならない。エースの勝敗は、チームの勢いに影響する。単なる1試合ではないのだ。昨年16勝を挙げ、防御率1.97を記録した菊池だからこそ、あえて苦言を呈したい。

週刊朝日  2018年11月2日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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