このほか、イオン子会社の総合スーパー、イオンリテールは、これまでも最大70歳まで雇用継続が可能だったが、今年から65歳以上をより積極的に雇用していこうと「G・Gパートナー制度」を始めた。「G・G」(グランド・ジェネレーションの略)とは、イオンが提唱するシニアに代わる考え方といい、「健康なG・G世代が豊富な知識・経験に基づくサービスをお客様に提供し、70歳まで活躍していただく制度」としている。

 定年延長はしないものの、化粧品のポーラは今月から「65歳まで」だった再雇用制度を改定し、年齢制限を撤廃した。これまでは定型業務が中心だったが、マネジメントの経験・能力を生かせるコースも新設したという。

 ここまで見てきたように、シニア社員の活性化やトップの決断、実力主義などが「65歳超雇用」を進める会社の原動力といえそうだ。とはいえ大企業全体で見ると、進めている会社はほんの一握りだ。人事コンサルタント出身で企業の人事施策に詳しい日本大学の谷田部光一特任教授は、次のように言う。

「大企業を見ていると法律や労働行政の誘導で動いていて、高齢者を雇っていこうという内在的ニーズや内在的必然性があまり感じられません。人材がたくさんいて、売り手市場とはいえ、まだ新卒も採用できているので、切迫感に乏しいところが多いのではないでしょうか。また従業員サイドも、再雇用を希望せずに退社する人が一定数います。それは『これ以上、雇われて働きたくない』という意思にほかなりません。『65歳定年』になるのは間違いないと思いますが、時間がかかるでしょうね」

 ところで、社員の60歳以降の活躍の場を「社外」に求める企業もある。大日本住友製薬(DSP)がその一つで、10年前から50歳代の幹部社員に「出向支援」を行っている。

 当初から支援にかかわっている原田徳仁キャリア開発担当オフィサーが言う。

「グローバル化や国の医療費削減策などで、製薬会社は国内の仕事がどんどん減り、社内で仕事を提供し続けることが難しくなったので始めたものです。表に出てきていない求人を見つけるのがポイントです。最初は大変でしたが、今では出向先は170社に上っています」

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