「65歳超」は、そこから「流れ」で進んでいったという。

「『年齢という障壁で働く道を閉ざすのはよくない』とする経営トップの考えが大きかった。加えて、中長期的に人手不足が予想される中、経験豊富でたくさんの人脈を持っている人財が、年齢だけが理由で社外へ流出してしまうのは余りにももったいない。元気な人には引き続き働いてもらえる受け皿を作らなければ、という思いもありました」(菊岡部長)

 例えば新制度の1期生、営業推進部の竹中務さん(68)の強みは、30年以上に及んだ資材調達の仕事で築いた取引先との人脈にある。張り巡らせた人脈を駆使して、新しい仕事の情報を取ったり、現役が攻略に苦戦している会社のキーマンへの到達方法を探ったりする。

「ウチの部には支店長経験者が大勢おり、その人脈を使えば業界の大抵の人へはたどり着けますね」

 65歳を前に知り合いの会社から誘いもあったが、同じ仕事が続けられる同社で働き続ける道を選んだ。月給は「20万円」の定額だが、企業年金とあわせれば一定の収入になる。社員の半分程度の金額が支給される賞与では、なお業績や個人評価で金額が変わる。

 今年で勤続50年。役員以外では「50年」は初めてだ。

「健康状態との見合いですが、頑張れるのであれば一年一年ステップを踏んでいきたい」
 菊岡部長によると、65歳の定年到達者の再雇用への応募率は毎年約7割。以前の60歳代前半の再雇用率は約6割だったというから、社内にとどまる比率は上がっており、大和ハウスの「65歳超雇用」は一定の成果を上げていると言えそうだ。

 活力、生きがい、老後マネー……。人生100年時代を迎え、さまざまな意味で「職業人生」の延長が議論されるようになっている。

 会社でいうと「定年」をどうするかだが、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、8割近い企業が定年を「60歳」と定めている。一方、高年齢者雇用安定法により、段階的にだが企業は従業員が希望すれば65歳まで全員を雇用する義務を負う。雇用の方法としては、(1)定年年齢の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制の廃止、の三つから選べるが、大企業を中心に圧倒的多数が継続雇用制度、それも「再雇用」を採用している。

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