つまり、現在の主流は「60歳定年、65歳まで再雇用」なのである。

 主流の先を行く「65歳への定年引き上げ」を実現した主な大企業の制度をまとめた。一律65歳に引き上げる企業が多い。00年代に引き上げた会社もあるが、13年ごろからが多くなる。理由としては、厚生年金の支給開始年齢の引き上げのほか、人材の確保や能力発揮を求める意見が目立った。

 この中から大和ハウスのように、次のステップとして「65歳超」に踏み込む企業も出てきている。少子化で労働人口が減っていく現実や、国が高齢社会対策大綱で「定年延長や65歳以降の継続雇用」を行う企業への支援を表明していることを考えると、すでに方向性は出ているように思える。「65歳超」を始めている会社を例に、今後を展望してみよう。

 大和ハウスの菊岡部長が強調したように、役職定年や再雇用による50歳代社員やシニアスタッフのモチベーションの低下は、多くの企業で共通の課題になっている。T&D保険グループの太陽生命も同じ悩みを抱えていたが、定年延長で解決へ大きく踏み出した。

「本当に(こんな人事が)出たんだ。でも、あの人なら、当然だよね」

 今年2月中旬、同社で春の人事異動が発表されると社内がざわついた。

 同社は17年から定年を60歳から65歳へ引き上げ、本人が望めば定年後も嘱託として70歳まで働けるようにした。それまでの「60歳定年、65歳まで再雇用」を5年後ろ倒しにした格好だが、それに合わせて57歳と定められていた「役職定年」を廃止した。つまり、会社が実力を認めれば、65歳の定年まで管理職でいられるようにしたのである。

 一番ケ瀬智彦人事課長が言う。

「役職定年をやめたのですから、57歳以上で役職を降りていた人で実力のある人は管理職に復活する道が開けます。そうです、見事、管理職に復活した社員が現れたのです」

 復活したのはシステム系の元課長(61)。それも前は部付課長だったのが、格上の統括課長に昇格しての復活だ。会社の「本気」を感じたからこそ、社内はざわついたのだろう。

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