当の課長が言う。
「課長から外れて決定権限がなくなったので多少戸惑いがありましたが、まさか復活するとは思っていませんでした。家族も同僚も驚いていましたね。でも、喜んでもくれました。せっかくなので、会社から評価される限り管理職を続けさせてもらえたらと思っています」
頑張れば役職を降りなくてもいい。50歳代後半以降の社員にとっては大きな励みになるし、それより下の社員はそのつもりで仕事に取り組める。
驚くのは役職定年だけではない。給料も60歳までの賃金体系を変えないどころか、60歳以降もそれまでと同じ給料が支給される制度にした。70歳までの再雇用での収入と合わせると、何と生涯賃金が1人当たり平均15%以上増加するという。
「確かに人件費は増えますが、投資だと思っています。しっかり賃金を払ったぶん成果も出してもらえれば、会社の業績は上がりますから」(一番ケ瀬課長)
社名と同じく社員にやさしい「太陽」政策のようにも見えるが、一番ケ瀬課長によると、田中勝英社長の思いが大きく影響したという。
「お客様を元気にするには、まず従業員が元気にならなければ、という発想です。社員たちは喜んでいると思いますよ。私の家庭では、妻が一番喜んでいました」
二つの企業の事例からは、シニア社員の処遇を工夫し、活力をアップさせることが、会社全体を元気にすることがわかる。
太陽生命の一番ケ瀬課長は経営トップの思いを挙げたが、外食大手の「すかいらーく」も、それで制度改定に一気にドライブがかかった。
15年初め、労組の求めに応じて、当時の再雇用制度の見直しを労使で協議していた。方向性が出たので谷真社長(現・会長兼社長)に報告に行ったところ、年齢だけで従業員を切り分ける時代ではないので、いっそのこと定年を延長してはどうか、というトップ判断がいきなり示されたという。
同社人財本部の高橋真一郎チームリーダーが言う。